熊本県 芦北町

デジタル人材の育成を起点とした自治体DXの取組

取組概要・背景

 芦北町は、熊本県の南部に位置する人口約15,000人の町で、総面積の約80%に緑豊かな山々が連なり、大関山を源とする清らかで豊富な水が不知火海(八代海)に注いでいます。西方に開けた芦北海岸は天草の島々を望み、温暖な気候で甘夏みかんやデコポンの産地として知られています。平成30年度に廃校舎をサテライトオフィスとして整備して以来、IT企業の誘致や、ICTを活用した地域課題解決にも取組んできました。
 社会環境の急速なデジタル化といった変化を踏まえ、令和4年度には、住民の利便性向上を目的とし、持続可能な行政サービスの提供及びデジタル社会の実現に向けた「デジタル化推進本部」を設置。同年新たに策定した「芦北町DX推進方針」に基づき、外部人材や近隣自治体と協力しながら、デジタル人材の育成や業務課題解決、ICTを活用した防災力向上など、全庁的なDX推進に取り組んでいます。

デジタル人材の確保・育成

 DXを推進する上では、課題の掘り起こしや整理、解決するための企画、実現するためのツール導入やシステム構築など様々な場面でデジタル人材が必要不可欠です。芦北町では、令和4年度の町重点施策として「デジタル人材の確保・育成」を掲げ、職員ひとりひとりが、デジタル変革を自分事として捉え、住民サービスの向上へと繋げて考えることが出来る人材を育成することを目的に、様々な研修を実施しています。
 令和4年度は、幹部向け講演会やGIS(地理情報システム)の勉強会、職員自らがデジタルを用いて地域課題の解決や行政サービスの改善・改革に繋げていくためのワーキングチーム研修等を実施しました。
 
■令和4年度の取組実績
 ①ワーキングチーム研修(会議・勉強会・グループワーク等)
 ②GIS勉強会
 ③DX人材育成講演会
 ④地域活性化起業人(外部企業人材派遣制度)の活用

■令和5年度の取組計画
 ①デジタル人材育成研修(基礎編・発展編)
 ②DX人材育成講座
 ③データ活用研修
 ④GIS・データ利活用研修
 ⑤幹部職員研修
 ⑥地域活性化起業人の活用

実在する課題の解決を図るワーキングチーム研修

 DXの推進役として、各課から1~2人程度を選抜しワーキングチームを組成しています。ワーキングチームを対象とした研修では、4つのチームに分かれて互いの業務課題を出し合い、デジタルを使った課題解決に取り組みました。座学だけではなく、現実に起きている住民の課題に当てはめて学ぶことにより、現場で確実に使えるアウトプットの機会を増やし、DXを活用した実効性の高い企画立案が可能となります。
 令和4年度の研修では各チームから次のような企画案が出され、実装に向けた検討・取組が進められています。ワーキングチームでは令和5年度も、窓口サービスや申請のデジタル化など、部局横断的な課題の解決に取組んでいくこととしています。

■令和4年度企画案
 ①水道開閉栓申請のオンライン化
 ②書かない窓口の実現
 ③施設予約システム(星野富弘美術館の空き状況確認のオン
  ライン化)
 ④有害鳥獣捕獲補助金申請サービス

いのちを守るDX

 DXで解決を図る課題は日常的なものにとどまらず、災害のような非常時の課題も対象となります。令和2年7月豪雨により甚大な被害を受け、現在も復旧・復興に取組んでいる芦北町は、防災力向上のDXも進めています。

①芦北町公式LINEでの災害情報の発信
 災害時に行政と住民の双方向の情報伝達をスムーズに行うため、防災行政無線と同様の内容を町公式LINEで発信しています。デジタルツールを活用した新たな情報通信手段を確立し、伝達方法の重層化を推進します。

②避難所入退所アプリの構築
 無償ツールを利用し、町内5カ所の主要避難所を対象に、入退所状況をデジタルで管理するアプリを構築しました。令和5年度には、避難住民の入退所状況、利用者数の自動集計、避難所空き情報の提供といった実証実験を行う予定となっています。

今後の取組、目指す姿

 DX推進の基盤はデジタル人材であり、職員一人一人がデジタル変革を自分事として捉え、自らの業務、住民へのサービスの価値と繋げて考えることができるよう、今後も幹部職員から実務担当者まで幅広い層を対象としたDX研修を行う予定です。
 また、タブレット端末を利用した「書かない窓口」の設置に向けた機器整備や、町公式LINEの機能拡充、住民票など各種証明書のコンビニ交付サービスなど、住民の利便性向上に向けたサービス拡充にも取り組んでいきます。自治体情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、自治体の行政手続きのオンライン化といった国の重点施策についても、国の状況を踏まえて対応していくこととしています。

 芦北町では今後も持続可能な行政サービスの提供とデジタル社会の実現に向けDXを全庁的に推進、人材の育成を強化し、町の活性化を図っていきます。

熊本県 芦北町(2023年8月1日時点)

人口:15,443人、世帯数:6,964戸
面積:234.0 平方キロメートル

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