【令和7年度】データ活用事例創出事業

住民ポータルアプリを活用した公共施設等広域ナビゲーション

1.概要

 人の往来が盛んな長洲町・和水町では、災害時などの緊急時に町外に出掛けている住民に対する「現在地」の情報提供に限りがあるため、防災関連データを中心にくまもとデータ連携基盤の持つ様々な施設情報データを住民ポータルアプリ「ながすアプリ(長洲町)」「なごみアプリ(和水町)」上で検索・登録したりナビゲーションできる機能を開発することで、両町の住民が「現在地」近くの施設を簡易に検索・お気に入り登録し、目的地まで誘導できるサービスを構築しました。

2.解決すべき課題・背景

(1)情報発信のデジタル化
    「長洲町」「和水町」は住民ポータルアプリを基軸にしたデジタル施策を企画しており、住民のデジタル行
   政サービスへの関心が高まっています。令和6年度に実装した「ながすアプリ」「なごみアプリ」の活用に向
   けて更なる利用者の獲得・住民関心の向上を課題としていました。

(2)防災分野での広域連携
    地域課題として水害に伴う土地の浸水や土砂災害等が想定されており、また熊本地震の発生から10年が
   経過することから、人の往来が盛んな両自治体では突発的な災害発生を想定し町域に限定しない広域の避
   難所・施設情報の提供が求められています。

3.取組み内容

(1)「施設・避難所マップ」の構築
  ①事業概要
    住民ポータルアプリ「ながすアプリ(長洲町)」 「なごみアプリ(和水町)」にて共通の「施設・避難所
   マップ」機能を構築しました。本機能はすべてのアプリ利用者が利用できる機能で、「くまもとデータ連携
   基盤」に各自治体が登録している施設情報を参照しており、施設を検索・表示させるほか、お気に入り登録
   や目的施設へのナビゲーション(誘導)ができます。
    お気に入り施設の登録状況やアンケート等で得られた情報・意見は今後の情報施策や広域連携への検討材
   料として活用を模索します。

  ②「施設・避難所マップ」の概要
    マップを開くと、スマートフォンの位置情報から現在地を中心としたマップが表示されます。マップ上に配
   置された施設ピンに触れることで、施設詳細を確認することができ、ページ下部の「現在地からの道順を表示
   する」を選択することでナビゲーション(誘導)を開始します。
    「施設・避難所マップ」では地域(市町村)単位の絞り込みと施設タイプ(9のカテゴリ)による絞り込みを
   行うことで、目的の施設を検索することができます。また、画面上の「☆」をタップすることで簡単に施設の
   お気に入り登録を行うことができ、検索画面上でソートできます。

(2)活用したデジタル技術
    Googleの「マイマップ(My Maps)」機能を利用し「くまもとデータ連携基盤」の施設情報等のマッピン
   グデータ(オープンデータ)を作成しました。「ながすアプリ」「なごみアプリ」と連携させることで、位置
   情報をもとにアプリ上で検索施設までのナビゲーションを実現しました。
    職員のアプリ管理画面上の操作により、避難施設の開設状況に合わせて「開設」フラグを付けたり視覚的
   に色を変更することを可能としています。

(3)活用したデータ
    くまもとデータ連携基盤上にある9のデータセット
   について両アプリとのAPI連携によるデータ取得を実施
   しました。データセットの選定にあたっては、「防災」
   関連の施設データを中心に、アプリ利用者に日常使い
   いただくための生活情報として「子育て施設」「観光施
   設」の施設データを選定しました。基盤データを参照
   するためのAPIを開発し日次でデータ取得・アプリ表示
   を行っています。
    本機能では長洲町・和水町の情報に限らず、「くまも
   とデータ連携基盤」に登録されているすべての自治体の
   情報を取得・アプリ表示しています。

4.実施結果

(1)ユーザー数の増加
    ながすアプリ・なごみアプリのユーザー数は「施設・避難所マップ」機能実装から約1か月で278名増加し
   ました。アプリだけでなく町ホームページやSNS、広報誌等を活用した両町の周知活動により、多くの住民に
   興味・関心をいただくことができたと考えています。利用者の増加率はアプリ導入後では最も高い結果となり
   ました。

(2)アプリ利用者アンケート
    本事業で構築した機能に対するアプリ利用者の関心度を把握し、将来的な横展開や広域化の検討に資する
   ため、機能実装後から「ながすアプリ」「なごみアプリ」の利用者を対象に、アプリに関する評価・意見を
   アンケートで収集しました。

    ながすアプリ・なごみアプリの利用者30名に対しアンケートを実施しました。回答者の利用目的の分析か
   ら高齢者の方が住民ポータルアプリの利用頻度は高い傾向が見られました。
    町外に出掛ける目的としては、買い物等のため週に複数回の移動をする層が最も多く、次いで通勤・通学
   を目的として日常的に移動している層が多い結果となりました。

    災害時の有効性については70%近くの利用者が「有効であり利用したい」と回答している一方で、「別種の
   民間サービス等の機能を利用している」との声もあり、既存の民間防災サービス等を活用されている層に対
   するアプローチとして防災以外のデータ提供も検討すべきであると捉えています。

   その他寄せられたご意見
    ・使い方が分からない箇所が多い。説明や利用促進に向けた広報周知を広げてほしい
     (回答者のうち17%のユーザーが操作に不安を抱えていることが判明。広報誌やHP、動画等による
      説明を希望している)
    ・災害時にどこでどのような災害(火事、土砂崩れ、災害)が発生しているか、通行止め区間の表示等
     があれば良い
    ・住民拠点SS、燃料・充電スタンド、店舗や飲食店情報、RVパーク(快適に安心して車中泊が出来る場所)
     等のマップ表示
    ・過去の災害(高潮や土砂崩れ等)の被害場所を知りたい

5.解決すべき課題に対する成果・課題点

(1)成果
 ・広域情報(施設・避難所マップ)の構築
   「くまもとデータ連携基盤」のデータを活用したことで、自治体の住民ポータルアプリが町域を越え、熊本県
  下広域での施設情報の提供を実現しました
   住民ポータルアプリの持つ「情報配信能力」と合わせることで、プッシュ型のお知らせ配信と連続した迅速か
  つ一貫した避難行動(施設検索・ナビゲーション)を取れる能力を獲得しました

 ・住民ポータルアプリ上に実装した意義
   住民ポータルアプリは高齢者にも利用されているデジタルサービスであり、デジタルサービスを日常利用しな
  い層を含む多くの住民がリアルタイムの情報(避難所開設状況)やナビゲーション機能等のデジタル技術を発災
  時に活用できるきっかけとなりました
   自治体の避難訓練など、高齢化が進む中で今後の防災強化に向けた取組みにデジタルを取り入れるきっかけに
  もなり得ると考えます

 ・データ利活用
   くまもとデータ連携基盤のデータと、両アプリ利用者の活用状況等のデータを組み合わせて分析することで、
  広域での防災連携や避難所物資等の検討に活用できる行政ツールとしての活用が期待でき、あわせて、アプリ利
  用者の意見等を踏まえ、基盤が保有するデータの拡充や利活用用途の拡大につなげる好循環が期待できます

(2)課題点
 ①町域を越えた防災分野での広域連携についての課題
  ・住民への周知・利用促進の不足
    ユーザーの利用データ母数がアンケート実施時点では十分ではないため、更なるアプリユーザーの獲得と
   共に、多くの方に本機能を利用いただくための周知施策の検討が必要である

  ・表示性能・操作性に関する課題
    水利施設等、特定データセットのデータ量が多く、全データの表示までに数秒のラグが発生している。く
   まもとデータ連携基盤の参画自治体が増えることで今後、更なるデータ追加が想定されるため、初期表示デー
   タについての見直しや、予め施設カテゴリを選択させる等の改良が必要である

  ・広域運用における管理主体・運用方法の課題
    現状は、住民ポータルアプリの管理画面上から、長洲町・和水町職員のみが避難所開設情報を設定できる
   仕様であるが、より広域の連携を図るためには、リアルタイムな情報の収集・反映ができる仕組みを検討する
   必要がある

 ②くまもとデータ連携基盤についての課題
  ・情報の網羅性について
    くまもとデータ連携基盤に登録されるデータセットについて、現時点では、自治体ごとの整備状況等により
   登録範囲が異なるが、今後、共通的にニーズの高いデータから登録が拡充されることで、広域でのサービス検
   討や情報提供の幅が一層広がることが期待される

  ・データ入力規則について
    データセットによって住所や地名の粒度(「市町村」単位、「郡・地区」単位など)が異なるため、広域情
   報としての提供を見据え、入力規則の標準化を進めることで、検索性・サービス性の一層の向上が期待できる

  ・情報の更新について
    くまもとデータ連携基盤では「AED設置施設」等の人命に関わる情報も取り扱うことから、登録情報を定
   期的に点検・更新する機会を設けることで、より信頼性の高いデータ基盤としての価値向上が期待できる

  ・個別サービスとの連携に向けて
    今後、くまもとデータ連携基盤と多様な民間サービス・行政サービスの連携をさらに円滑にするため、「秒
   間アクセス数」制限の見直しや「検証環境」の整備を進めることで、サービス検討・実装が行いやすい環境づ
   くりにつながる

 ③住民ポータルアプリの横展開に向けての課題
  ・導入検討における自治体課題(県下市町村職員ヒアリング)
    住民ポータルアプリはプッシュ型の情報配信や自治体との双方向コミュニケーションを行えるもので、くま
   もとデータ連携基盤と連携したサービスは魅力的だが、利用率を上げるためには住民生活にマッチした機能
   選定・要望の反映・情報配信を行う必要があるため、導入に踏み切れない
    住民の高齢化率が高い地域では、住民への操作に対する不安や操作説明等の人的サポートが不足しがちで
   あり、普及するまでに時間がかかる

  ・検討すべき課題
    アプリ利用率を高めるために住民ニーズの収集による広域データセットの追加提案
    住民ポータルアプリ提供自治体の利用データ等から有用な広域連携事例の創出
    住民ポータルアプリの普及促進にむけた導入支援・操作説明等のコンテンツ

 ④住民ポータルアプリ広域化に向けての課題
  ・広域化についてのご意見(県下市町村職員ヒアリング)
    住民ポータルアプリの広域化については、県下自治体への本取組の紹介の中で「運用コストの共同負担」
   や「既存アプリへの相乗り」による財政面でのメリットが挙げられた。一方で、近隣市町村や郡単位ではな
   く「県レベルでの住民ポータル整備」を望む声も挙がった

  ・懸念事項について(県下市町村職員ヒアリング)
    他の都道府県レベルにて共同運用されている住民ポータルについては、住民の生活圏外の情報が表示され
   る(情報を受け取る)ことで情報過多に陥りやすいとの意見や、自治体固有のデジタルサービスを運用してい
   る場合に、固有のサービスに支障をきたすのではないかとの懸念が挙げられた

  ・検討すべき課題
    広域情報掲載のメリットは活かしつつも掲載情報の精査と情報量の抑制を検討する必要がある。加えて、自
   治体固有のサービスと共生し相乗効果を生むためのUI設計や機能化が求められる

6.今後の展望・総括コメント

 くまもとデータ連携基盤に登録された施設データを基に「施設・避難所マップ」を機能化したことで、利用者は町域に限定されず、県内の施設情報を広く閲覧・活用できるようになりました。自治体にとっても、アプリ上での利用・登録状況(パーソナルデータ)を踏まえ、備蓄資材の見直しや町域を越えた共同活用等の検討に活かすことができます
 また今後の展望として、避難所の開設状況に加え、施設ごとの避難者数等を地図上で分かりやすく把握できる機能の検討を進めます
 今後は、単独自治体への提供にとどまらず、近隣自治体を含む広域での実装に発展させる余地があれば、本事業で実装した機能はより広い地域で活用され得ます。あわせて、住民ポータルアプリに限らず、防災分野のアプリ等からも同機能を利用できる提供方法について検討を進めます
 複数自治体で共通する住民ニーズが見込まれる場合には、基盤データの拡充に向けた提言や、保有データと利用状況(パーソナルデータ)を掛け合わせた広域連携施策の立案等により、他分野への展開も可能です

例:自治体主催のイベント集客、観光ルートの表示、通行止め情報と迂回路、公共交通機関の運行情報
  スーパーやコンビニ・ドラッグストア等の営業時間、給油スタンド(電気自動車等を含む)、車いす(バリアフ
リー)対応施設、喫煙所、車中泊可能施設(RVパーク)、公衆トイレ、温泉、街道の通行止めなど工事情報、避難所
チェックイン人数、等