CENTRIC株式会社

処理時間半減を実現したAI-OCRとRPAの導入による業務改善

 CENTRIC株式会社熊本支店は、コンタクトセンター受託業務、BPO事業受託業務、音声感情解析サービスを活用した業務など多岐にわたる業務を展開しています。多くのスタッフが在籍し、先進技術を活用したサービスで、単なる業務効率化に留まらない、顧客への提供価値の最大化と、従業員一人ひとりが専門性を発揮できる働きがいのある環境作りに取組まれています。今回は、年末調整確認代行業務におけるAIとRPAを活用した業務効率化の事例をご紹介します。

抱えていた課題

 CENTRIC株式会社熊本支店では、クライアント企業から委託を受け、年末調整確認代行業務を行っています。クライアント企業から提出された各種書類の画像データをもとに、担当者が手作業で提出フォーマットへ入力を行っていましたが、この作業は非常に時間と労力を要するものでした。なお、入力した内容は目視で確認し、誤りがあれば都度手作業で修正を行う必要がありました。画像の解像度や記載内容のばらつきにより、確認作業の精度や効率にも課題があり、業務全体の負担が大きくなっていました。
 さらに、年末調整業務は11月から12月に集中する業務です。この繁忙期には、大量の申請書類を処理するために多くの人員を確保する必要があり、人材の確保や教育も課題となっていました。業務の属人化も進みやすく、品質のばらつきや対応スピードの遅れといったリスクも抱えていました。

AI-OCRとRPAによる自動化の実現

 業務の属人性や確認作業の手戻りといった課題を解決し、業務変革による新たな価値を創造するため、2024年1月に「DX推進室」を新設し、生成AIやAI-OCR(AIを利用して、画像やスキャンされた文書から文字を認識・抽出する技術)などの先端技術を活用した業務負荷軽減の取組みをスタートしました。現場の担当者とDX推進室のメンバーがチームを組み、現場起点のボトムアップ型で実践を進めています。

 ●年末調整確認代行業務におけるDX
   年末調整確認代行業務においては、クライアント企業から提出された画像をもとに入力された提出フォーマット
  の内容に誤りがないかを自動でチェックするツールを導入しました。AI-OCRによる画像認識とテキスト化、RPA
  による自動処理という一連の流れを構築し、業務の効率化と処理の最適化を目指しました 。

 ●取組みによる効果
   AI-OCRとRPAの導入により、年末調整確認業務は大幅に効率化されました。従来、1件あたり約4分を要してい
  た処理時間が約2分にまで短縮し、昨年度の処理件数は約38,000件にのぼるため、全体では約1,270時間の削減と
  なりました。
   なお、人員面では、DX導入前は約20,000件の処理に40~50名を必要としていましたが、導入後は約38,000件
  の処理に30名程度で対応が可能となり、処理件数が増加したにも関わらず人員の削減が実現しました。
   さらに、今回の取り組みは業務の属人化の解消にもつながっています。AI-OCRやRPAを活用した業務の標準
  化・自動化により、業務の安定性が向上した他、進捗確認もスムーズとなったことで業務の期日遅れが無くな
  りました。
   この結果、クライアントからの信頼度が高まり、顧客満足度が向上し、失注率が0となっています。また、従
  業員がより顧客対応に時間を割けるようになり、サービスの質の向上が実現しました。

変革を成功に導いた3つの挑戦

 DXを推進する過程では、AIやRPAの開発経験を持つ人材の採用や採用後の実務に即した人材育成に課題がありました。そこで、熊本県が実施した「デジタル推進力向上アカデミー」に参加し、社員のデジタルスキルの向上に取組みました。
 また、現場で実際に活用するシステムの構築に向け、導入後も現場の声を反映しながら、日々の改善とバージョンアップを繰り返す必要がありました。特に、クラウド型業務ソフト(SaaS)の操作画面(UI)の仕様変更など、外部要因によってRPAが誤作動を起こすケースもあり、突発的な運用課題に柔軟に対応しています。
 さらに、DX推進室のメンバー自身が試行錯誤を重ねながら、技術を学び、自動化の仕組みを構築していく必要がありました。現在も毎日トライ&エラーを繰り返していますが、こうした手探りでのDXの推進は、時間や労力を要する一方で、机上の空論ではない、現場に根差した実践的なノウハウの蓄積にもつながっています。

今後の展望

 これまでのDX推進を踏まえ、さらなる業務効率化とサービス品質の向上を目指しています。現在、年末調整確認業務の自動化率は一部にとどまっていますが、今後はAI技術の精度向上と業務フローの見直しを通じて、自動化率の拡大を目指しています。また、税務署提出書類の自動作成機能の導入も検討しており、年末調整業務全体のデジタル化と一貫処理の実現に向けた取組みも考えています。
 さらに、紙ベースで管理されている業務データのデジタル化と検索性の向上にも取組み、プロンプトをはじめとするナレッジを蓄積し、情報の利活用を促進することで、業務のスピードと精度を高めることを目指しています。こうした取組みの中で、AIと人の役割分担を明確化し、人がより付加価値の高いコア業務に集中できる体制の構築も進めていきます。

これからDX取組む企業へのメッセージ

 AI導入は大掛かりに思えるかもしれませんが、日々の業務に小さな工夫を加えるだけで十分に効果を実感できると考えています。ヒトがコアとして、業務の中にある課題に気づき、そこにAIを活用することで、誰でもDXの第一歩を踏み出せます。まずはできることから始めることが大切です。

会社概要

社名 CENTRIC株式会社 熊本支店
所在地 熊本県熊本市中央区下通1丁目3番地8号下通NSビル6F
代表者 代表取締役 山田 亮
事業内容 ・コンタクトセンター受託業務
・BPO事業受託業務
・感情解析サービス受託業務
・熊本大学大学院共同研究拠点

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