リバテープ製薬株式会社

クラウドサービスを利用した品質管理業務のDX
~DXの取組みが“業務”“働き方”“意識”の改革に大きく貢献~

 リバテープ製薬株式会社様は、社名となっている救急絆創膏「リバテープ」をはじめ、機能性に優れた消毒剤・テープ等の衛生材料や、スキンケア製品など数多くの製品を開発・製造する企業です。
 今回は、クラウドサービスを利用した「品質管理業務」のデジタル化による業務効率化の取組みをご紹介します。

取組みの背景、抱えていた課題

■「紙」業務による潜在的リスク
 以前、リバテープ製薬では、業務のほとんどを「紙」で管理していました。保管場所の確保によるコストや、盗難や紛失による情報漏洩、改ざん、経年劣化といった「紙」業務による潜在的リスクに危機感を感じていました。
 また、医薬関連製品の製造においては、顧客要望に合わせてパッケージ仕様が違うことや、仕様変更回数が多いという特徴があります。仕様変更に伴い、文書も増加するため、どの文書が最新なのかわからなくなるという「紙」による文書管理リスクに課題を感じていました。

■他社の品質事故をきっかけにDXを本格化
 2021年に起きた医薬品関連企業の品質事故をきっかけに、それまで感じていた自社の品質管理への危機感が大きくなりました。
 「絶対に同じような品質事故を起こしてはいけない」という思いから、システム担当者と品質管理担当者が主体となり、品質管理に関する業務改革、DXを本格化させました。

クラウドサービスを活用した取組み

■文書の「ペーパレス化」とクラウド上での「保管・管理」
 最初に取組んだのは、製品、プロセス、材料などに関する規格文書のペーパレス化です。この規格文書も他の文書と同様に、社員それぞれが紙で印刷しデスクに保管していました。そのため、社員全員がきちんと保管しているか、最新の文書に更新されているかといった課題がありました。
 そこで、紙での印刷・保管から、クラウド上での保管、閲覧へ変更しました。この変更により、社員全員が必ず最新文書にアクセスする仕組みを整えました。
 また、DXに取組むにあたり「スモールスタート」、「クイックスタート」を意識しました。文書の「ペーパレス化」、クラウド上での「保管・管理」では、品質の規格文書という狭い範囲から始め、その後、徐々に対象を広げました。今では、社内文書のほとんどがペーパレス化、クラウド上での保管・管理へ移行しています。

■クラウド上での「承認業務」
 医薬品・医薬部外品の開発では、製造工程や成分に厳格な基準が定められており、社内の多岐にわたる部門の承認が必要です。以前の承認業務では、紙の文書に承認者の押印が必要だったため、担当者は承認を得るために複数の拠点を1時間以上かけて往復することが日常でした。さらに、20名程の承認が必要で、すべての承認を得るために1週間程度要することもありました。
 そこで、承認業務を、紙の文書への押印から、クラウド上のデータに電子印鑑を押印する方法に変更しました。これにより、承認者がそれぞれの拠点からクラウドにアクセスし電子印鑑を利用するため、担当者が複数拠点を回る必要がなくなりました。
 また、クラウド上での「承認業務」においても、「スモールスタート」、「クイックスタート」の取組みで、約1年という短期間で試験運用まで実現しました。

取組みの効果

■品質管理業務の質の向上
 ペーパレス化しクラウド上で「保管・管理」することで、文書の不適切な修正・変更や紛失を防止することができるようになりました。また、更新前の文書の利用を防止でき、最新データへの更新漏れもなくなりました。その結果、かねてより危機感を感じていた、品質管理業務の質の向上につながりました。

■業務効率化による残業時間の削減、ワークライフバランスの向上
 書類のペーパレス化により、1,400件の書類を電子運用する事ができました。1つの書類で削減できた時間がトータルで30分と仮定して、1,400件x30分=42,000分=700時間の関連業務を削減できました。
 加えて、クラウド上での「保管・管理」により、文書を簡単に検索できるようになりました。必要なタイミングで、必要な文書をすぐに取り出すことができるため、業務の確認や監査業務でも作業時間が削減されています。
 また、クラウド上での「承認業務」により、担当者が承認者の押印のために複数拠点を回る必要がなくなりました。承認に要していた時間の大幅な短縮され、さらには残業時間の短縮につながりました。
 業務効率化による作業時間の短縮、残業時間の削減は、社員のワークライフバランスの向上につながっています。また、会社側のメリットとして、残業代の削減につなげることができました。

DX推進による社内の意識改革

 DXに取組む際に最も苦労したのは、社員からの理解を得ることでした。これまでは、ほとんどの業務を「紙」で行っていたこともあり、「紙」からの脱却への抵抗感が強く、社員からデジタル化への反対もありました。社員からの理解を得るため、DXを主導していた2名の社員で、社員1人ずつに対し地道に説明に回りました。DXのきっかけとなった、他社の品質事故の事例を挙げつつ説明することにより、徐々に理解が広がりましたが、多くの社員から理解を得るには非常に苦労しました。
 地道な説明により、徐々にDXへの理解が進み、取組みを進めるうちに、「この業務もデジタル化してほしい」と社員からリクエストが自発的に来るようになりました。さらに、デジタル化が進んだ今では、わずかに残っている紙文書に対し「まだ印鑑押さないといけないの?」といった声まで聞かれています。社内全体で意識が変わり、DXの取組みを前向きにとらえる雰囲気が醸成されていると感じています。

今後の展望

 上記のDXの取組みは、システム担当者と品質管理担当者の2名を主体とした社員からのボトムアップの形で始まり、実現にまで至りました。弊社の長い歴史の中で積み上げてきた業務を、社員が主体となり、大きく変えていくのは地道で大変な労力だったと思います。品質保証の未来を見据えた社員の、実行行動力業務・意識・働き方それぞれの改革に大きな貢献をしてくれました。

 今後の展望として、DXを全社的な取組みとして拡大する予定です。そのために、今年度を「DX元年」と位置づけ、会社の行動指針に組込みました。
 具体的には、システム部を中心に「デジタル知識のある人材」と各部署の「業務に関する知識を持つ人材」が密に連携を取り、様々な改革を進める予定です。

 また、DXは、終わりなき取組みと認識しています。継続的な推進で、「生産性向上」⇒「顧客のニーズへ対応」⇒「会社の利益増加」⇒「社員への還元」⇒「社員の働きがい向上」といういいサイクルを回し続け、「組織の風土改革」を実現させたいと思っています。

会社概要

会社名 リバテープ製薬株式会社
所在地 <本社>
〒861-0136 熊本県熊本市北区植木町岩野45番地
代表者 代表取締役社長 橋爪 淳
創業 昭和30年12月
事業内容 医薬品・医薬部外品・医療機器・化粧品の製造販売

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