【令和7年度】データ活用事例創出事業

防災データの集約と活用による災害時物流支援の強化

1.概要と背景

 大規模広域災害時に被災者の元にいち早く物資を届けるために、データ連携基盤に登録してある静的データ(平時からの備え情報)と災害時に迅速に情報収集したリアルタイムデータを活用し、災害時物流分野におけるデータ活用の有効性を昨年度事業から継続して検証しました。主な取組み内容は以下のとおりです。
(1)既にデータ連携基盤に登録してある情報に加えて、災害時物流に必要なデータを洗い出し、そのデータの活用
   方法を検証する。
(2)平時から登録してあるデータと災害時に現場から収集したリアルタイムデータを掛け合わせて、オペレーション
   に即した形で自動的に集計して物資の流れを可視化し、自治体職員のオペレーションを最小限に抑えながら意思
   決定できる仕組みを構築する。また、物資輸送までのオペレーションがどれぐらい効率化できるか検証する。

2.取り組み内容

 災害時物流における課題は表1のとおり3点です。昨年度1・2を対象に実証を実施し、今年度3について検証を実施しました。

 物流事業者を含めた災害時物流の構築に当たり、災害時の物資輸送業務を迅速かつ効率的に実施するために解決すべき課題を4つに整理しました。
(1)輸送計画作成を支援する仕組み
(2)輸送判断を支援する仕組み
(3)輸送状況を可視化する仕組み
(4)輸送実績を管理する仕組み

 これらの課題に対応するため、本プロジェクトでは災害時の物資輸送業務を支援する実証システムを開発しました。
 本実証システムは、避難所からの物資要請、輸送計画作成、輸送状況の把握および輸送実績の管理を一体的に支援するものであり、市町村、県およびトラック協会等の関係機関が共通の情報を共有しながら物資輸送業務を実施できる仕組みを提供します(図1)。

 物資要請情報、車両情報、施設情報、道路情報等のデータを統合的に管理し、AIを活用した輸送計画作成支援や輸送判断支援を行うことで、災害時の物資輸送業務の迅速化および効率化を図ることを目的としています(図2~6)。

3.活用したデータ 

 本実証では災害時の物資輸送業務を支援するため、物資、車両、施設、避難所および道路等に関するデータを
活用しました。
 データはあらかじめシステムに登録した基礎データ(マスタデータ)と実証実験の実施過程で入力された業務
データ(トランザクションデータ)により構成しました。活用したデータの概要、取得方法および活用方法を
表2に示します。

4.現地実証におけるアンケート結果まとめ

 令和8年2月に、菊池市、上天草市、天草市、美里町、山都町、苓北町の6市町において、広域災害が発生したという想定のもと、物資のリクエストから調達までの一連の業務について、システムを活用した現地実証を行いました。
 実証に参加した市町村職員、県職員、トラック協会の方からのアンケート結果として、電話やLINE等による従来の連絡手段と比較し、県・市町村・運送事業者がシステム上で一体的に連携できる点について、業務の効率化や使い勝手の面で高い評価が得られました。
 画面構成がシンプルで直感的に操作でき、マニュアルがなくても対応しやすいことから、発災時の混乱した状況下においても有効に活用できるとの意見が多く見られました。特に、物資輸送トラックの位置情報や配送状況を可視化できる点は、災害対応の迅速化に加え、現場職員の不安やストレス軽減につながる重要な機能として評価されました。また、経験の浅い職員や日常的に物資業務に携わらない職員でも対応可能となり、人員不足が進む中で業務の平準化や人材活用の幅を広げる効果が期待されています。
 一方で、高齢化が進む地域においては、どこまでシステム利用が定着するかへの懸念や、スマートフォン操作時の使いづらさ、選択肢の分かりにくさといった改善要望も挙げられました。また、国の物資支援システム(B-PLo)との二重入力が現場負担となっていることから、システム連携を求める声が強くありました。

5.まとめ

 避難所からの物資要請、輸送計画作成、車両位置や道路状況の可視化、輸送実績管理を一体的に支援する仕組みを開発・実証した結果、輸送手配や情報収集・共有に要する作業時間が大幅に削減されることを確認しました。特に、配車調整や輸送状況確認など、人手や経験に依存していた業務において、業務負担の軽減と意思決定の迅速化に効果が認められました。一方、本実証は災害時を想定した効果検証を主目的として実施したものであり、今後本格導入を検討するに当たっては、災害時のみならず平時から継続的に利用できる仕組みであることが求められています。今後の課題について具体的な取り組み内容①~③の観点から整理しました。これらの課題を踏まえ、より実用性の高いシステムへと段階的に改善を進めていきます。

 ①輸送物資情報と車両マッチングの高度化
   物資の種類や数量情報を基に輸送業者・車両をマッチングする仕組みの有効性が確認できた一方で、物資マス
  タの粒度や仕様差による体積・重量算定、パレット換算ロジック、車両仕様の多様性への対応が課題として明ら
  かになりました。今後は、物資マスタの標準化、積載計算アルゴリズムの高度化、車両リソースをリアルタイム
  で把握できる仕組みの整備が求められます。

 ②輸送車両の位置情報・ルートの可視化と共有
   輸送車両の位置情報や進捗状況を地図上で一元的に把握・共有することで、従来業務と比較し約40%の業務
  改善効果が見込まれることが確認されました。災害時の迅速な意思決定に有効である一方、今後は市町村・県な
  ど利用者の役割に応じた表示内容の最適化や、視認性を考慮したUI改善が課題です。

 ③通行可能な道路情報の収集・共有
   衛星データとAIを用いた通行可能ルートの可視化を行い、業務改善の可能性を確認しました。現状は、複数の
  地図・情報サイトを併用しており、個別に情報を確認しながら最適な通行ルートを判断する必要があるため、今
  後は、熊本県データ連携基盤を活用しながら複数機関が保有する道路・地図データを連携・集約する仕組みを検
  討し、災害時のみならず平時活用できることが重要です。