【令和6年度】データ活用事例創出事業

AIコンシェルジュを活用した商店街の賑わい創出

1.概要

 本事業においては、行政、民間が保有するデジタルデータを活用し、地域課題を解決する新たなビジネスやサービス等の創出を目指します。

 今回はAI活用型として、
「くまもとデータ連携基盤の情報」
「崇城大学古賀研究室のバリアフリー情報」
を取得可能な音声対話型AI(ChatGPT)を開発し、イベント情報なども答えられる「まちなか型」と飲食店などでサービスを行う「店舗型」を開発し、まちなかに設置して有用性を検証します。
 AIコンシェルジュは利用者の発声による質問をテキスト化し、AIにて必要なデータを収集し音声による応答と表情によって人との会話と同じようにコミュニケーションを取ることが出来ます。
 また、中心市街地を広くメタバース化し、様々なイベントを通してにぎわい創出を行い、AIの活用を促しIT技術の普及と浸透を目指します。

2.解決すべき課題・背景

(1)熊本市のまちなかや店舗の最新IT技術の普及・浸透の遅れ(ハード)
    コロナ禍を経ても、熊本市のまちなかや個人商店ではIT技術の活用が十分に進んでおりません。来街者の利便
   性向上や魅力的なまちなか活動の実現に向け、AI技術を活用した都市・イベント・店舗情報の提供が求められて
   います。

(2)熊本市の最新IT技術の普及・浸透に向けた産官学民連携による実践的取り組みとそのプロセスにおける
   意識改革・ビジョンの提言(ソフト)
    多くのITプロジェクトはアプリの開発に留まり、継続的な活用が十分に検討されていない場合があります。
   そのため、産官学民が協力し、意見を交換しながら、IT技術を活用した持続可能なまちづくりの方策を検討し、
   次のプロジェクトへつなげていきます。

(3)地方都市におけるアーティストの活動の場の不足、その受け皿の可能性をメタバースに見出す
    地方ではアーティストの活動の場が限られ、コロナ禍でさらに減少しました。IT技術を活用し、メタバースを
   新たな活動の場として提供することで、地元アーティストの活躍を支援し、まちなかの活性化につなげることが
   期待されます。

(4)IT技術の普及・浸透が現実世界の商店街に悪影響を与える可能性
    IT技術の普及により、オンラインショッピングの利用が増え、現実の商店街への来訪者が減少する可能性があ
   ります。そのため、仮想空間と現実の商店街を結びつけ、双方が共存しながら発展できる仕組みの構築が求めら
   れます。

3.取組内容

(1)取組内容
   ・産学官民参加によるワークショップの結果を元にAIコンシェルジュの開発を行い、「まちなか型」と
    「店舗型」の2種類のAIの実地検証を行いました。
   ・メタバースの開発は、広域的な空間を再現するための様々な検証と調査を行い構築しました。

(2)活用したデジタル技術
    要素技術、システム概念図を以下に示します。
    Webサービスであるため展開・共有が容易であることと、技術のコア開発を避け既存のサービスを組み合わせ
   ることで開発コストを抑え、今後のAIの発展にも柔軟に対応でき拡張性と持続性を兼ねています。

(3)活用したデータ
   画像データ
    店舗型にてグラスの空き具合などの判定に利用
   観光情報
    Web検索した結果を整理して応答する
   バス情報
    「バスきたくまさん」からリアルタイムの情報を取得
   飲食店情報
    Web検索した結果+崇城大学のバリアフリー情報
    から取得
   イベント情報
    Web検索した結果+Webで得にくい情報は事前に
    追加登録
   バリアフリー情報
    崇城大学のバリアフリー情報から取得
   くまもとデータ連携基盤
    APIを利用しJson形式で受信可能な全てのデータを
    取得可能
   その他
    Web検索した結果を整理して応答する
   禁止ワード
    不適切な発言を抑制し回答しないようにする

(4)くまもとデータ連携基盤の活用
    「くまもとデータ連携基盤」のAPIを活用し、熊本県が提供する全24種類のオープンデータのうち、JSON形式
   で受信可能な14種類に対応しました。音声操作のみで必要な情報を素早く取得できるようになり、より効率的な
   データ活用が可能となりました。データが更新されれば自動的に適用されるメリットもあります。

   <くまもとデータ連携基盤から取得したデータ>
    アートポリス一覧、医療機関一覧、ライブカメラ一覧、子育て施設一覧、公共インフラ施設 橋梁、
    公共インフラ施設 ダム、公共インフラ施設 樋門・樋管、公共インフラ施設 排水機場、
    公共インフラ施設 砂防施設、公共インフラ施設 港湾、公共インフラ施設 公営住宅、
    交通事故統計情報、観光施設一覧、公衆無線LANアクセスポイント一覧、公共インフラ施設 堰

4.実施結果

■みんなでつくるAIまちづくりコンシェルジュワークショップの実施

  キャラクターデザインにおいては、崇城大学芸術学部の
 学生により
 『熊本らしさと親しみやすさを兼ね合わせたキャラクター』
 というコンセプトで13種類作成

■AIコンシェルジュまちなか型の実証
  AIまちづくりコンシェルジュの有用性の検証するため、
 2024年11月25日~12月1日の6日間、上通と下通、バス
 ターミナルが併設されたサクラマチクマモト、桜の馬場
 城彩苑で社会実験を実施しました(有効回答数:64)。
  体験者の9割以上がAIまちづくりコンシェルジュとの会話
 を楽しむことができており、AIまちづくりコンシェルジュ
 とのコミュニケーションに対して有用性が見られました。

■バーチャル美術館
  2024年11月7日18:00~19:00、メタバースプラットフォーム「cluster」で上通商店街のメタバース空間で、
 バーチャル美術館を実施した。参加者は352名で、ユーザーはアバターを通じてメタバース空間に展示された
 芸術作品を鑑賞しました。

■メタパーク&オモケンフェス2024
  2024年12月1日17:00~20:00、メタパーク&オモケンフェス2024を実施。
  本イベントは、メタバース空間と熊本のまちなかのオモケンパーク(リアル)で同時に開催しました。
   参加者数
    オモケンパークの現地参加者:51名
    メタバースの参加者:132名

■銀杏祭出展
  10月12日、上通下通周辺の商店街が合同開催する
 「銀杏祭」にて試作品のAIコンシェルジュを
 「熊本クリエイターズギルド」として出展しました。
  MetaQuest3を貸し出すメタバース体験、3Dモデリング
 体験、ゲーム開発体験なども企業と共同で6ブース出展し、
 試作品のAIコンシェルジュも体験していただきました。

■熊本市中心市街地ウォーカブルビジョンの
 パブリックコメント周知イベントでの出展
  2025年1月11日(土)12日(日)の2日間、
 熊本市、市街地整備課が開催したイベントにて
 AIコンシェルジュを体験していただきました。

5.解決すべき課題に対する成果・課題点

 熊本県が保有する都市情報と大学の研究室が行った調査を基にした情報は、これまで十分に活用されていませんでした。本プロジェクトで開発したAIまちづくりコンシェルジュは、これらの情報を集め、来街者に文化施設やバス運行、店舗、イベント情報などをAIの言語生成・対話の機能を活用することで、対話形式で提供することができました。また、バリアフリー情報などの研究室が持つオリジナル情報も利用しています。
 「個別店舗対応型AI」を通じて、訪れた客は店の推薦メニューや店舗情報を得ることができ、興味や再訪のきっかけを作りました。
 課題としては、AIまちづくりコンシェルジュが大型ディスプレイに限定されていたため、将来はモバイル端末にも対応を広げ、都市情報をいつでもどこでも提供できるように改良することが挙げられます。さらに、複数の店舗がAIの設置に興味を示しており、拡大していく予定です。また、熊本県APIダッシュボードの情報を見直し、より実用的な情報を提供するための更新にも取り組む予定です。

6.今後の展望・総括コメント

双方向型AIまちづくりコンシェルジュの展開(AI機能の強化)
 開発したAIまちづくりコンシェルジュは、来街者に都市情報を与える一方向型のモデルでした。今後は、AIまちづくりコンシェルジュを設置する店舗側も有益な情報を入手することができる、双方向型のまちづくりコンシェルジュの開発を試みます。顧客との会話内容を収集し、テキストマイニングによって、性別、世代別、利用目的に応じたメニューの選択の傾向、顧客の店舗に対する評価等を可視化し、メニューの在庫や価格設定、店舗の課題に対する改善策を検討する参考情報に役立てることができます。

 また学習内容を差し替えることで他分野への展開が可能となり、メタバース内に配置することで熊本の特産品を紹介する海外向けのメタバース展示会にて商品案内が現地語で行えるAIコンシェルジュの開発も検討しています。