有限会社福田屋
菓子製造における業務削減と品質向上に向けたDXの取組み
有限会社福田屋は、創業以来、熊本に根差した菓子の製造を行い、主に県内の九州自動車道サービスエリアや観光施設、JR熊本駅、阿蘇くまもと空港などで販売されています。2018年には「栗千里」が第9回ニッポン全国ご当地おやつランキングで熊本県初のグランプリを受賞され、以降、地産地消にこだわり熊本県産和栗の100%使用にシフトした事業展開を行われています。
DXに取組んだ背景
新型コロナウイルスの感染拡大により、当社の売上は一時的に大きく落ち込みました。しかし、その後の回復により、直近では過去最高に近い売上を達成しています。このような状況下をチャンスと捉え、目まぐるしく変化する予測困難な社会に取り残されず、持続的な成長を続けるためには、DXが必要不可欠であると考えました。
なお、DXの推進にあたっては、専門家である株式会社フュージョンテク様や崇城大学様にご支援を頂き、様々な取り組みを行っています。
DXの取組み:アプリによる作業記録
●抱えていた課題
商品の製造において、作業記録として各スタッフの作業時間や製造出来高を記録します。以前は、この作業記録を「紙」で行っていました。
しかし、紙での記録には、製造現場での衛生的な保管が難しいことや、記録の紛失リスクが高いという課題がありました。
また、作業記録の分析・管理のため、各スタッフが記入した紙の記録を管理者がパソコンに入力し直す必要があり、この作業に月200分程かかっていました。さらに、入力作業中に打ち間違いなどのミスも発生していました。
●取組み内容
そこで、Googleクラウドのアプリ開発サービスを利用し、作業記録をアプリで記録するようにしました。
具体的には、タブレットを利用し、各スタッフに作業時間や製造出来高を入力してもらうようにしました。入力されたデータはGoogleスプレッドシートと連携し、確認できるようにしました。
●導入のメリット
紙ではなくタブレットで入力することで、製造現場でも衛生的な管理が可能になり、記録の紛失リスクもなくなりました。また、管理者が改めてパソコンで入力する必要がなくなり、月200分程の作業時間が削減され、業務効率化が実現しました。さらに、転記ミスがなくなり、データの正確性が向上しました。
なお、アプリの導入は、googleクラウドのアプリ開発サービスを利用したことで、初期費用は0円でスタートすることができました。
DXの取組み:温湿度計測ユニットによる環境管理
●抱えていた課題
お菓子の製造において、製造環境の温度や湿度の管理は非常に重要です。原材料の保管室や作業室、完成品の保管室において、適切な温度や湿度を維持しなければ、商品の品質に影響が出る場合があります。これまでの温度や湿度の測定は作業負荷を最小限に抑えるため、1日に1度の実施に留まっており、品質のレベル維持には、製造環境を常時モニターするといった適切な管理の必要性を感じていました。
●取組み内容
そこで、温湿度計測ユニットによる温度と湿度の管理を実施しました。
具体的には、作業室や保管室に温湿度計測ユニットを設置し、設置場所ごとに温度と湿度の規定を決めます。温湿度計測ユニットで温湿度を測定し、規定を超えた場合には担当者にアラートメールが送られる仕組みです。アラートを確認した担当者が現場へ確認に向かい、適切な温度・湿度となるように調整することができます。
●導入のメリット
温度計測ユニットの導入により継続的な計測が可能となり、アラート機能により規定値を超えた場合には迅速に対応ができるようになりました。これにより、商品の品質向上につながっています。
なお、導入当初は規定値を超えることが度々ありました。そこで、担当者を集めた「温湿度管理アラート勉強会」を実施し、アラートの原因の特定や改善策の検討を始めました。その結果、導入当初に87件/月だったアラートが、現在では0件/月となっています。(2025年1月時点)
DXの取組み:AIを活用した検品作業
●抱えていた課題
不良品を取り除くため、個包装内の脱酸素剤に色の変わる検知剤を付け、スタッフが検知剤の色を識別することで品質の検品作業を行っていました。
しかし、検品作業は1日3万~5万個に上り、目視による検査はスタッフの負担が大きい作業となっています。また、検知剤の色の識別にはスタッフによるばらつきが生じます。正確な検品作業のため、識別を統一する仕組みを作りたいと考えていました。
●取組み内容
そこで、崇城大学と連携し、AIを用いた自動外観判定による検品システムの開発に取り組みました。具体的には、箱に梱包した商品を上からカメラで撮影し、AIが検知剤の色を識別して検品する仕組みです。
●導入のメリット
システム開発により、これまで3名のスタッフが行っていた目視検品作業がAIで自動化されました。これにより、スタッフの作業負担が軽減され、人手不足の解消にもつながっています。さらに、AIを活用することで識別にばらつきが生じることなく、正確な検品作業が実現しました。
今後の展望
DXの推進により、作業時間や製造出来高の作業記録や、温度・湿度の計測データをデジタルデータとして蓄積しています。今後はこれらのデータを活用し、不良品の要因分析や、製造出来高と作業時間・残業時間との関係分析を行うことで、さらなる商品の品質向上や作業の効率化を目指していきたいと考えています。
また、現在開発中のAIを用いた自動外観判定による検品システムについても、1年から2年以内に本格導入できるよう、引き続き開発に取り組んでいきます。このシステムの導入により、検品作業の精度と効率が大幅に向上することを期待しています。
さらに、これまでDXの推進は一部の限られた部門に留まっていましたが、今後は全社的に活動を拡大していく予定です。全社的なDX推進により、業務全体の効率化と品質向上を図り、持続的な成長を実現し、さらには、菓子製造業界を盛り上げていきたいと考えています。
会社概要
社名 | 有限会社福田屋 |
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所在地 | 熊本市北区植木町豊田814番地 |
代表者 | 代表取締役 福田 聖也 |
創 業 | 昭和23年3月 |
設 立 | 昭和32年3月26日 |
事業内容 | 菓子製造業・卸売業 |