株式会社寺本酒販

「伝票照合」と「集荷作業」における業務効率化と業務品質向上の取組み

 株式会社寺本酒販様は、熊本県熊本市南区に拠点を置く酒類卸売販売の企業です。50年以上にわたり、ウイスキー、日本酒、焼酎、ビール、ワイン、スピリッツなど多種多様な酒類を取り扱い、地域の飲食店やホテル等に提供されています。
 業務効率化やサービス向上に向けDXにも取組まれ、2024年には「くまもとDXアワード」において奨励賞を受賞されています。今回はくまもとDXアワードを受賞された「電子ペーパーを利用した集荷作業効率化事業」を含む2つのDXの取組みについてご紹介します。

DXに取組んだきっかけ

 DXに取組んだきっかけは、日常業務において最も時間がかかる、伝票照合作業の効率化を進めたいと考えたことです。
 伝票照合作業とは、商品を販売した際にお客様からサインを頂いた伝票の情報と、販売管理システムに登録された情報を照合させる作業です。1日あたり約2,000枚の伝票を照合する必要があり、毎日5~6名の従業員で3時間程かけて行っていました。
 そこで、デジタル技術を用いた伝票照合作業の効率化を目指し、DXの取組みを始めました。

DXの取組み:特殊スキャナを用いた伝票照合のデータ化

 照合作業においては、多くの人員と時間がかかる他、対応する従業員によって、作業スピードや正確性に差があり、作業効率や業務品質にばらつきが生じるという問題がありました。
 また、伝票は一定期間保管しておく必要があり、1日あたり約2,000枚という大量の伝票の、保管作業による従業員への負担や保管スペースの確保といった問題もありました。

●取組み内容
 そのような課題を解決するため、伝票のデータ化に取組みました。
 伝票は2枚複写式となっており、通常のスキャナでは連続で読み取ることができないため、特殊スキャナを導入しました。伝票を特殊スキャナで読み込み、伝票から読み込んだデータと販売管理システムのデータを自動で照合させる仕組みを整えました。
 また、伝票保管では、特殊スキャナで読み込んだ伝票の画像データをサーバー上へ保管する仕組みを整え、紙の伝票を保管する必要が無くなりました。

●導入の効果
 伝票のデータ化、照合作業の自動化により、作業時間約77%削減という大幅な時間短縮と業務正確性の向上を実現しました。人員の確保が厳しい中、必要な人員が減り、人件費の削減にもつながりました。
 また、紙の伝票の保存が必要なくなったことで、保管作業における従業員の負担削減、保管スペースの確保の問題も解消されました。

●導入において苦労した点
 導入の際に苦労した点は、特殊スキャナの機材選定と読み取り設定です。
 機材選定においては、2枚複写式の伝票を連続で読み取りのできるスキャナを見つけるために、10台以上のデモ機を取り寄せテストを繰り返しました。そのため、最終的な決定まで約2ヵ月もの時間を要しました。
 また、特殊スキャナの読み取り設定においては、一般の印刷機とは違う、ドットインパクトプリンタで印字された伝票を、鮮明な画像でスキャンするため設定に時間がかかりました。正確なデータの読み取りを実現するため、何度も調整を繰り返しています。

DXの取組み:電子ペーパーを利用した集荷作業の効率化

 寺本酒販では、配送ドライバーが、配達する商品を倉庫からピックアップする集荷作業を行います。その集荷業務において、いくつかの問題が存在していました。
 ワイン等の商品は生産年が異なるだけで値段や味に大きな差がありますが、非常に似た見た目のものが数多く存在します。そのため、ミスなく正確な集荷には商品知識が不可欠であり、商品知識の教育には時間とコストがかかっていました。
 また、商品を取違う等のミスが生じた場合、顧客に直接迷惑がかかり、結果として、顧客喪失につながるリスクがあります。

●取組み内容
 倉庫の商品棚に、電子ペーパーの棚札を設置しました。電子ペーパーの棚札は、紙のような見た目ディスプレイで、パソコンを用いて表示画面を簡単に編集できるアイテムです。
 集荷作業では、配達ドライバーが手元の端末に商品リストのリスト番号を入力すると、集荷対象の商品の棚札が光り、集荷する商品が一目でわかる仕組みを整備しました。

●導入の効果
 電子ペーパーの棚札を導入したことで、集荷作業に商品知識が必要なくなり、誰でも簡単に集荷業務に携わることができます。これにより、配達ドライバーの教育にかかる時間とコストが削減されました。
 さらに、集荷ミスが減少し、正確な商品配送が可能となることで、サービスの質が向上し、顧客からの信頼獲得と顧客喪失リスクの低減につながりました。
 また、商品情報の詳細な確認が不要となったことで、集荷業務の時間が短縮され、作業効率が向上しました。

●導入において工夫した点
 電子ペーパーの導入にあたり工夫した点は、電子ペーパーの設置方法です。
 電子ペーパーの設置には、専用のアタッチメントを利用することもできますが、従業員と最適な方法を考え、試行錯誤を繰り返し、マジックテープを採用しました。これにより、専用のアタッチメントの利用に比べ、コスト低減につながっています。また、今後も運用を進めながら、より最適な方法がないか模索を続けていきます。

今後の展望

 今回紹介した取組みは、いずれもテスト運用を行っている段階です。費用対効果が大きいと見込めることから、今後、システムの調整や設備の準備を整え、出来るだけ早い段階で本格運用を始め、業務効率化、サービスの向上を実現する予定です。
 なお、伝票照合作業のデータ化により削減した時間を活用して、これまで、営業担当者が行っていた各種事務作業(見積作成・欠品報告等々)を別の社員が行い、営業担当者は新規案件の獲得に時間に注力することができるようになります。
 また、集荷業務については、電子ペーパーの導入で商品知識を持つ必要が無くなり、誰でも携わることができるようになったことから、今後は、運送ドライバーでなく、高齢者や短時間勤務を希望する人材を雇用して運用出来ればと考えています。集荷作業を運送業務と切り離すことで、さらなる効率化を目指します。

会社概要

社名 株式会社寺本酒販
所在地 〒861-4101 熊本市南区近見9-9-85
代表者 寺本 光明
事業内容 酒類卸売販売、小売業

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