有限会社青柳
「仕込み」における業務効率化や作業負担の低減、品質向上に向けたDX
有限会社青柳(熊本郷土料理 青柳)様は、昭和24年に創業し、熊本市中央区下通に店舗を構える老舗の郷土料理店です。
今回は、2021年より運営を始めた工場での「仕込み」業務の効率化に向けたDXの取組みをご紹介します。
DXに取組んだきっかけ
青柳では、調理場スタッフの長時間労働の改善を目的に、仕込み作業のための工場を熊本市新屋敷に開設しました。
この工場では、旬の食材の美味しさ・鮮度を凍結させる冷凍技術「旬結」やAI等のデジタル技術を活用し、テクノロジーと職人の技を組み合わせた新しいビジネスモデルの構築に取組んでいます。
その中で、飲食業未経験者の雇用や週休二日制といった労働環境の整備、徹底した機械化・IT化を進めており、これらの実現に向けた業務効率化や作業負担の低減、さらには、品質向上を目的にDXの取組みを始めました。
工場での取組み内容
工場では、主に以下の4つの取組みを行っています。
1. アプリを活用した在庫情報の共有
工場は店舗と離れた場所にあり、工場の在庫情報を適宜店舗
へ共有する必要があります。しかし、工場の運営はスタッフ一
名で対応しており、そのスタッフが店舗からの在庫確認をリア
ルタイムで行っていたため、スタッフの急な休みには店舗から
工場在庫の確認がスムーズにできないといった問題が生じてい
ました。
そこで、在庫情報の共有に「zaico」というアプリを導入し
ました。工場スタッフが品目と個数をアプリに登録すると、店
舗スタッフはいつでも在庫情報を確認することができます。
アプリの導入により、課題であったスタッフが休みの際の在
庫確認が可能となりました。
なお、アプリは既存のサービスを利用したことで、低コスト
で気軽に導入することができました。
2. AIを活用した品質管理品
スタッフが仕込みで食材をカットする際、サイズのばらつき
を防ぐため、適切なサイズにカットできているか確認する必要
があります。しかし、確認作業は時間がかかるだけでなく、多
くの指摘が生じることで、確認する側とされる側の双方でスト
レスを感じる作業となっていました。
また、在庫管理のため、カットした食材の個数をカウントす
る必要がありますが、数百個となる場合も多く、カウントにも
時間を要していました。
そこで、崇城大学情報学部と連携し、AIを活用した食材のサ
イズや個数を確認するシステムの開発に取組みました。
システムでは、カットした食材の写真を撮影し画像をアップ
ロードするだけで、AIが自動的にサイズ識別と個数のカウント
を行います。
AIで識別を行うことで、スタッフの作業が削減され効率化さ
れただけでなく、サイズ確認の際のスタッフのストレス軽減に
つながっています。
3. 自動練り機導入による作業負担削減
仕込み作業では、胡麻豆腐や朝鮮飴を練る工程があります。
特に朝鮮飴の仕込み作業では、約60分間、高温の飴を練るこ
とに加え、滅菌を目的に温度75度以上を1分以上保つ必要があ
り、スタッフへ負担のかかる作業となっていました。
そこで、自動練り機を導入しました。さらに、滅菌のための
適切な温度管理を行うため、こちらも崇城大学情報学部と連携
し、練り機に温度センサーを取付けました。この温度センサー
の設置により、温度75度以上で1分以上練った場合に通知が鳴
る仕組みが整えられました。
自動練り機の導入により、スタッフの作業負担が大幅に減り
ました。また、温度センサーによる正確な温度管理が実現され
たことで、適切な衛生管理が行われていること示す「HACCP
認証」の取得につながりました。
4. 温度管理システムの導入によるリスク管理
工場で仕込み作業を行った食材は冷凍庫に保管します。しか
しながら、工場はスタッフ一名で運営しており、無人の時間帯
も短くありません。そのため、停電などによる冷凍庫内の温度
上昇に気づくことができないリスクがありました。
そこで、冷凍庫内の温度データをスマホで確認するシステム
を導入しました。このシステムでは、冷凍庫内に設置した温度
センサーのデータが、自動的にクラウド上にアップされ、スマ
ホを用いて遠隔で確認することができます。なお、急激な温度
上昇が一定時間続いた場合には、スマホへアラートが通知され
ます。
このシステムの導入により、工場が無人の際でも適宜温度を
確認することができ、停電などによる緊急の際でも、通知によ
りすぐに対処に動く仕組みが整えられました。
今後の展望
様々なデジタル技術の導入により、仕込みの6割を工場で作業できるようになりました。それにより、店舗の調理場スタッフの残業がほとんどなくなり、当所の目的であった長時間労働の解消が実現できています。
また、デジタル技術による自動化や業務効率化で、飲食業未経験者の雇用や週休二日制といった労働環境の整備が進んでいます。実際に、工場は若手の飲食業未経験スタッフが運営しています。
今後の展望としては、仕込み以外の業務でもDXを進めます。特に、生成AIの利用を検討中で、予約管理や顧客情報の管理、外国人スタッフの人材育成等の効率化を目指したいと考えています。
会社概要
社名 | 有限会社青柳(熊本郷土料理 青柳) |
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所在地 | 〒860-0807 熊本市中央区下通1-2-10(城見町通り) |
代表者 | 代表取締役社長 倉橋 篤 |
事業内容 | 飲食サービス業(日本料理) |