株式会社SENSTYLE
AI搭載見守りシステム活用による介護DXの推進
株式会社SENSTYLEは、2021年に介護施設内では全国初の文部科学省認定研究所「エイジングサイエンスラボ」を設立し、様々な業務のDX推進とDX推進に向けた研究・開発を進めています。また、2023年から介護見守りシステムを提供する企業とシステム開発に関わる提携を結び、介護業界におけるDXのモデルを構築に取組んでいます。
今回は、「メディケア癒やし京町台」「メディケア癒やし今宿」「メディケア癒やし長嶺」といった3か所の住宅型有料老人ホームを運営する「メディケア癒やしグループ」と連携し進める、「介護見守りシステム」を用いた介護施設におけるDX推進の取組みをご紹介します。
DXに取組んだ経緯
■ DXによる介護業界の人手不足の解消を目指して
介護業界は深刻な人手不足が問題となっています。昨今、このような人手不足への対応としてDXが注目されていますが、介護業界は対人サービスであることや高齢者のITリテラシーへの課題からDXの推進が難しい業界といわれています。
そこで、介護事業におけるDXの可能性を模索し、デジタル技術の導入にチャレンジすることで、DXによる介護業界全体の人手不足の解消へつなげたいという思いから取組みを始めました。
抱えていた課題
■ 居室内での転倒や夜間の事故対応
運営する住宅型有料老人ホームには、施設ごとに100名から200名を超える高齢の入居者様がいらっしゃいます。そのため、転倒などの事故が少なからず発生してしまいます。それらの事故に対し、原因を分析し様々な対策を講じていましたが、なかなか発生件数が減らないことを課題に感じていました。
また、夜勤の時間帯は少人数のスタッフで入居者様をケアしており、各居室を訪問する間隔が空いてしまうため、事故対応が遅れてしまう場合があることに課題を感じていました。
課題解決に向けた取組み ~介護見守りシステムの導入~
■ システム概要
課題解決に向けて、介護見守りシステム「HitomeQケアサポート」(以下、システム)を導入しました。
このシステムでは、各居室に設置したAIセンサーで入居者の行動を記録しています。起床や離床、転倒といった動きを検知した場合には、スタッフのスマートフォンに通知され、スタッフはサポートが必要な入居者様の居室を適切なタイミングで訪問することができます。そのため、効率的に入居者様のケアができ、スタッフの人数が少ない夜間も迅速な対応が可能です。さらに、転倒が検知された場合には、スタッフへの通知だけでなく、その前後の映像が自動的に録画される機能も搭載されています。
介護見守りシステム導入のメリット
■転倒の70%減少
システムの導入により、転倒が発生した場合に、映像に基づく正確で迅速な原因分析が可能となりました。また、その原因分析を基にそれぞれの入居者様にあった転倒防止対策を考え、24時間以内に実施しています。
加えて、その対策にもこのシステムを利用しています。例えば、原因分析の結果、転倒の原因がベッドからの立ち上がり(離床)にある入居者様の場合は、システムを利用して、ベッドからの起き上がり(起床)を検知したタイミングでスタッフへ通知します。通知を受けたスタッフが、入居者様がベッドから立ち上がる前に居室へ向かいサポートすることで、転倒を防ぐことができるようになりました。
このようなシステムを利用した原因分析と対策により、システム導入前に比べ転倒を約70%減少させることができました。
さらに、転倒や事故を事前に防ぐ事例が増えたことで、スタッフの負担軽減にもつながっています。システム導入前は、対策を講じても事故の大幅な減少は実現できず、スタッフのストレスや疲弊の原因となっていました。しかしながら、システム導入後は、「自分のアイデアや行動で入居者様の転倒を防いだ」という成功体験が増え、スタッフのやりがいの向上にもシステム導入の効果を感じています。
■適切な人事考課の実施
システムでは、入居者様だけでなくスタッフの対応状況も把握することができます。例えば、入居者様への対応回数や対応時間、対応方法などのデータが記録されています。これらの行動データを、各職種によって定められた評価基準と照らし合わせることで加点評価などを実施しています。データに基づく評価を行うことで、管理者の主観を排除した公平で適切な人事考課の実施につながっています。
今後の展望、DXに取組みたい企業へのメッセージ
今後の展望としては、介護見守りシステムを用いて集めたスタッフの行動データを利用し、当社の介護サービスを海外へ展開することを目指しています。
具体的には、入居者様とのコミュニケーションにおいて、目線の高さや向け方などをスコア化し、データを蓄積したいと考えています。さらに、蓄積したデータに質的な評価基準や管理者の評価基準などを加え、「日本のおもてなし」を取り入れた介護サービスとして海外に展開できればと思っています。
DXに取組みたい企業へのメッセージとしては、DXに取組む際には、初めから中心の業務や事業が大きく変化するようなDXを進めるのではなく、労務管理といった細かい業務から徐々にデジタル化に取組む方がよいということです。デジタル技術や新たな業務体制への抵抗感から、DXに取組むことで従業員の離職につながる可能性もあります。それを防止するためにも、有給申請などの細かい業務から少しずつ取組み、従業員の皆さんが少しずつデジタル技術に慣れる環境を作ることが重要ではないでしょうか。
会社概要
社名 | 株式会社SENSTYLE |
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所在地 | 〒862-0911 熊本県熊本市東区健軍1-37-6 |
代表者 | 代表取締役 国中優治 |