株式会社くまもとKDSグループ

DX推進による「業務の効率化・拡大」と「地域貢献」の取組み

 株式会社くまもとKDSグループは、熊本市を拠点に自動車教習所やドローンスクール、福祉事業などを展開している企業グループです。
 顧客の利便性向上や従業員のモチベーションアップを目的に様々なデジタル技術を活用したDX推進を図るため、実現したいビジョンや具体的な達成目標などを記載した「DX戦略書」の作成などに取組まれています。
 今回は、「コミュニケーションの効率化」、「SNSの活用」、「AIを活用した運転分析」、「オンデマンド授業」の4つの取組みをご紹介します。

(1)取組みのきっかけ

■副業人材からの提案
 DXに取組んだきっかけの一つは、副業人材の方からの提案です。
2020年より九州財務局紹介の副業人材採用を始めました。その中で、デジタルツールの活用などの知識が豊富な人材を採用したことで、SNSの運用など、デジタルツールに関する様々な提案があり、DX推進のきっかけとなりました。

■新型コロナウイルス感染症の拡大
 2020年に警察庁は、新型コロナウイルス感染症の拡大やデジタル化の推進などの社会情勢の変化を踏まえ、指定自動車教習所でのオンライン式の学科教習を認めました。これをきっかけに、「オンデマンド授業」を開始し、熊本県内で初めて学科教習の「オンライン」と「対面」のハイブリットでの運用を開始しました。

(2)取組み内容と効果

■「LINE WORKS」を利用したコミュニケーションの効率化
 コミュニケーションの効率化を目的に、カレンダー・掲示板・ビデオ会議などの仕事に便利な機能が統合された
「LINE WORKS」を導入しました。今では、社内の情報共有や連絡ではほぼ100%、「LINE WORKS」を活用しています。
 具体的には、掲示板機能で全体への連絡事項を共有しています。対面で実施していた朝礼での連絡事項の共有を、アプリ上での共有へ切り替えました。
アプリの掲示板機能を利用することで、社員は、個人の端末からいつでも、どこでも、何度でも情報を確認でき、共有した情報の定着度が上がったように感じています。また、返信機能を使って、質問や提案を投稿することも可能です。気軽に投稿できることで、社員からの積極的な改善や業務の提案が増えています。
 さらに、インストラクターとそれぞれの教習生との連絡も「LINE WORKS」を利用しています。「LINE WORKS」を利用することで、コミュニケーションの証跡が会社で管理できることから、ガバナンスの強化や社員のコンプライアンス意識の向上につながりました。なお、「LINE WORKS」は、英語や中国語、ベトナム語など様々な言語に対応しているため、外国人教習生とのコミュニケーションも円滑にとれるようになりました。

■SNSを利用した広報業務の拡大
 若手社員からの提案で、TikTokを中心としたSNSを広報業務に活用しています。SNSは、社員が他の業務と兼任して運営しており、業務内容やインストラクターの紹介などの動画コンテンツを中心に投稿しています。動画再生数は、多いもので15万回に上り、若い世代を中心にKDSグループを知ってもらうきっかけの一つになっています。また、教習生に対しての宣伝だけでなく、新卒や中途採用への広報にも役立っており、実際にSNSがきっかけの一つとなり、人材採用につながった事例もありました。
 さらに、SNSに掲載したコンテンツ関して、教習生などから声をかけてもらうことで、社員のモチベーションアップにもつながっています。

■AIを活用した運転支援の強化
 昨今、高齢ドライバーの再教育のニーズが高まっていることを背景に、AIが運転履歴を判断し、点数化するシステムを搭載した講習車(以下、AI搭載車)を導入しています。AI搭載車では、縁石や白線との距離を測るセンサーと、ドライバー目線と顔の角度を捉えた車内カメラ映像のデータにより運転を採点します。AI搭載車の導入により、認知能力(運転に関する記憶力・判断力)の見える化が可能になりました。
また、個々人の特性を踏まえた客観的な判定も可能になり、講習サービスの質向上につながっています。
 最近では、このAI搭載車を活用して、高齢ドライバーの再教育だけでなく、運転に不安のある高齢者を支援する運転トレーニングや高次脳機能障がい*向けの運転再開プログラムを実施しています。
*脳卒中などの病気や交通事故などで脳の一部を損傷したために、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態

■オンデマンド教習(学科)を活用した学習の効率化
 コロナ禍にオンライン式の学科教習が認められたので、学科教習において、オンライン授業と対面授業のハイブリットで実施しています。
 ハイブリットでの実施の効果としては、教習生が学科教習の為に来校の必要が無くなり、利便性の向上につながっています。今では、9割以上の教習生がオンデマンド教習を利用しています。
 また、オンデマンド教習の導入は、発達障がいや軽度の知的障がいがある教習生のサポートに役立っています。いつでも、どこでも、何度でも気軽に学科教習を受けることが可能になったことで、苦手な分野を中心に理解するまで効率的に学習でき、学科試験の合格率が向上しています。

(3)DXを契機とした地域貢献

 KDSグループでは、様々な地域貢献活動を実施しています。
 その一つに、空き教室の貸し出しの取組みがあります。
 オンデマンド教習の利用者が増え、対面での受講者が減ったことで、学科の教習を実施していた教室に空きが出るようになりました。そこで、教室を地域貢献に活用できないか考え、地域の皆様へ空き教室の貸し出しを実施しています。現在、熊本市国際交流事業団の日本語教室に無料で週一回木曜日の午前中ご利用いただいています。
 このように、DXの取組みをきっかけに資源の利活用が、地域貢献の取組み拡大につながっています。

(4)今後の展望

  DX推進において、デジタル技術を用いた様々な取組みを実施していますが、すべてが順調に進んだわけではありません。
 順調に進まなかった取組みの一つに、システムの開発があります。これまで培ってきた自動車学校のノウハウを活かし、入校から卒業まで一気通貫した自動車教習向けのシステムを開発していました。

 その開発において壁となったのは、「知識と経験の不足」でした。システムの開発はこれまで経験のない取組みであったため、システム開発の技術的な業務は専門の業者へ委託しました。しかしながら、初めての経験であったことで、業者とのコミュニケーションや開発に係る期間の予測などがうまくいかず、思い描いたシステムの構築は、諦める結果となりました。

 システム開発が難航した経験もあり、また、更なるDX推進に向け、新たにシステムエンジニアを採用しました。自社で採用することで、単なるデジタル技術活用だけでなく、デジタル化に伴い収集したデータの分析や、これまで培ったノウハウを活用し、現場に寄り添ったシステムを構築・運用していく予定です。その結果、利便性・生産性の向上により、社員にとって「働きがいのある」「働きやすい」環境整備を実現する、DX推進に取組んでいきます。
 また、デジタル技術を用いた地域貢献活動も継続していきます。

 上記で紹介した取組み以外にも、「運転寿命を伸ばそうプロジェクト」と題して、熊本県内の大学や企業と連携したイベントを実施中です。このイベントでは、高齢者の方々に「歩行データ・物忘れテスト」のデータ取得にご協力いただいています。ご参加いただいた皆様に自身の体のことを知っていただく機会になっているだけでなく、イベントで集めたデータを活用し、運転寿命延伸に向けた大学等の研究に役立てていく予定です。
 このように、デジタル技術や収集データの活用、DXを契機とした資源利活用の取組みを通して、自社だけでなく、地域全体の変革に取組んでいきます。

会社概要

会社名 株式会社くまもとKDSグループ
所在地 <本社>
〒861-8003 熊本市北区楠6丁目6-25
代表者 代表取締役 永田佳子
関連会社 株式会社KDS熊本ドライビングスクール
株式会社KDS菊池自動車学校
有限会社KDS技能講習トレーニングセンター
株式会社KDSコミュニティカレッジ

ホームページ  KDS熊本ドライビングスクール DX戦略書